チーコさんの動物占いルポ

相談者のデータ 2019年11月08日

猿
  • シルバーのゾウ
  • 男性
  • 70歳
  • 現状や本質を正確に見抜ける人だが、好きなことには盲目的に夢中になってしまうときがある。
悩める人々を救いたい一心で行っている占いカウンセリング。最近、どんなことで悩むのか、キャラクターごとにいくつかの傾向があることに気づいた。

先日私のカウンセリングルームを訪れたのは、ゾウ×シルバー・男性 70歳。現状や本質を正確に見抜ける人だが、好きなことには盲目的に夢中になってしまうときがある。彼も例外に漏れず……
昔は映画くらいしか娯楽がなかったんですよ。銀幕のスターやヒロインがスクリーンに映し出されると、それはそれは心がときめいてねぇ。私はエミリスト、家内はダイちゃんファンでねぇ。映画好きのふたりが結婚して、映画館を建てたんですよ。でも、時代は止まってくれませんねぇ。今では古びた映画館になってしまいました。近所の子どもたちは心霊スポットだとか……言いたい放題ですわ
ひとつ隣りの町に、大音響や3Dが楽しめる映画館がオープンすると、彼が経営する映画館は一気に火の車となった。それまでは固定客もあり、苦しくてもなんとか成り立っていたが、いよいよ閑古鳥が鳴くばかりになった。
ええ、ええ。分かってるんですよ。映画館の支配人として、もう閉館することは決めてるんです。時期をねぇ、いつにしようか迷っていまして。まだちょっと未練がありましてねぇ。せめて、半年後に配給される吉岡えみり主演作品を上映してから閉館したいと思っていますが、どうでしょうねぇ
現状を見きわめる目を持つシルバーのゾウの彼は、自分の映画館がどんな状況になっているかちゃんと理解している。このまま続ければ、赤字がふくらむのは承知で、それでも支配人として最後の仕事をまっとうしたいのだろう。占いの教本を開くと、半年後のシルバーのゾウは仲間に慕われる時期だった。
半年後は仲間に慕われ、あなたも献身的になる時期です。長年愛してくれたお客さまにサービスして、一緒に映画館とお別れするのはいかがですか?しんみり閉館するのではなくて、にぎやかにみんなで映画談議に花を咲かせるんです。楽しく陽気に、ひとつの時代に幕を下ろすのがベストかもしれません
それは名案だ!私もひっそり泣く泣く閉館するのは性に合いませんよ。流行っていたころの従業員も招いて、当時助監督だったあの人も呼ぼう。確か田舎に帰って、玉ねぎ農家を継いでいるはずだから。家内は久しぶりにチケットのもぎりをしたいと立候補するかもしれないですわ。私は館内放送で『皆さま、当映画館最後の日にようこそお越しくださいました』とあいさつして……
彼の涙は見ないことにした。「近くで工事をしているので、ホコリっぽくてごめんなさい」とティッシュを差し出すと、彼は泣き笑いの表情を浮かべた。シルバーのゾウはクールに構えている割に情にもろい性格だ。映画ファンのみならず、支配人自身のファンも閉館を惜しむことだろう。